[[index.html|古今著聞集]] 相撲強力第十五
====== 378 宇治左府随身公春を不便なる者に思し召したること・・・ ======
===== 校訂本文 =====
宇治左府((藤原頼長))、随身公春((秦公春))を不便(ふびん)なる者に思し召したること、めだたしきほどのことなり。
ある時、いかなることかありけむ、みづから公春打たんとせさせ給ひけるに、公春、大臣(おとど)の御手を取りて、「もし打たせ給はば、御手を折るべし。君といふとも、いかでか打たせ給ふべき」と申しければ、大臣、罪を乞はせ給ひて、逃れ給ひにけり。公春、笑ひて申しけるは、「もし十人といふとも、公春一人に当たり給ふべからず。今より後も、かかることなせさせ給ひそ((「給ひそ」は底本「給に」。諸本により訂正。))」と申しければ、大臣、承諾せさせ給ひけり。
それより御勘当なかりけり。公春は大力にてなむ侍りけり。
===== 翻刻 =====
宇治左府随身公春を不便なる物に思食たる
事めたたしきほとの事なりある時如何なる事
かありけむ身つから公春うたんとせさせ給けるに
公春おととの御手をとりてもしうたせ給はは御
手を折へし君といふともいかてかうたせ給へき
と申けれはおとと罪をこはせ給てのかれた
まひにけり公春わらひて申けるは若十人とい
ふとも公春一人にあたり給へからす今より後もか
かる事なせさせ給にと申けれはおとと承諾
せさせ給けりそれより御勘当なかりけり公春
は大力にてなむ侍けり/s277r
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