[[index.html|古今著聞集]] 術道第九
====== 300 後鳥羽院御熊野詣ありけるに陰陽頭在継を召し具せられけるに・・・ ======
===== 校訂本文 =====
後鳥羽院((後鳥羽天皇))、御熊野詣(みくまのまうで)ありけるに、陰陽頭在継((賀茂在継))を召し具せられけるに、毎日の御所作に千手経((千手陀羅尼経))をあそばされける、件(くだん)の御経を御経筥に入れられたりけるを、取り出だされけるに、その御経見えず。
いかに求むれども無かりければ、在継を召して占はせられけるに、いかにも失せざるよしを申して、「なほよくよく求めらるべし。あやまりて、いまだ箱の中に候ふものを」と申しけり。その後、また求められければ、御経筥の蓋、軸つまりて付きたりけるを、え見ざりけり。
叡感ありて、御衣(おんぞ)を賜はせけるとなん。
===== 翻刻 =====
後鳥羽院御熊野詣ありけるに陰陽頭在継をめし
くせられけるに毎日御所作に千手経をあそはされ
ける件の御経を御経筥に入られたりけるをとりいた
されけるにその御経見えすいかにもとむれともなかり
けれは在継をめしてうらなはせられけるにいかにもうせ/s209l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/209
さるよしを申てなをよくよくもとめらるへしあやまり
ていまた箱の中に候ものをと申けりその後又もと
められけれは御経筥の蓋軸つまりてつきたり
けるをえ見さりけり叡感ありて御衣を給はせ
けるとなん/s210r
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/210