[[index.html|古今著聞集]] 管絃歌舞第七
====== 230(序) 管絃のおこりその伝はれること久し・・・ ======
===== 校訂本文 =====
管絃のおこり、その伝はれること久し。清明、天にかたどり、広大、地にかたどる。終始、四時((「四時」は底本「四位」。諸本により訂正。))にかたどり、周旋、風雨にかたどる。
宮(きゆう)・商(しやう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)の五音あり。あるいは五行に配し、あるいは五常に配す。あるいは五事に配し、あるいは五色に配す。およそ物として通せずといふことなし。また変宮・変徴の二声あり。合はせて七声とす。また調子の品その数多しといへども、清濁の位(くらゐ)みな五音を出でず。
讃仏敬神の庭、礼義宴飫(えんよ)の筵(むしろ)も、このの声なければ、その儀をととのへず。かるがゆゑに、興福寺の常楽会(じやうらくゑ)、百花匂ひをおくり、石清水((石清水八幡宮))の放生会(はうじやうゑ)、黄葉(もみぢ)衣に落つ。しかのみならず、清涼殿の御遊には、ことごとく治世の声を奏し、姑射山(こやさん)の御賀には、しきりに万歳の調べを合はす。
心を当時に養ひ、名を後代に留むること、管絃に過ぎたるはなし。
===== 翻刻 =====
古今著聞集巻第六
管絃歌舞第七
管絃のおこりそのつたはれる事ひさし清明天にかた
とり広大地にかたとる終始四位にかたとり周旋風雨にかた
とる宮商角徴羽の五音あり或は五行に配し或は五常に
配す或は五事に配し或は五色に配す凡物として通せすといふ
ことなし又変宮変徴の二声あり合て七声とす又調子
品その数おほしといへとも清濁のくらゐみな五音をいてす讃仏
敬神の庭礼義宴飫の筵も此のこゑなけれはその儀をとと
のへすかるかゆへに興福寺の常楽会百花匂ををくり石
清水の放生会黄葉衣におつしかのみならす清涼殿の御遊には/s158l
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ことことく治世の声を奏し姑射山の御賀にはしきりに万歳
のしらへをあはす心を当時にやしなひ名を後代に留る事
管絃にすきたるはなし/s159r
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