[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六
====== 229 入道右大弁真観を仙洞の御会にたびたび召しありけれども・・・ ======
===== 校訂本文 =====
入道右大弁真観((葉室光俊))を仙洞の御会((後嵯峨院の御所での歌会。))にたびたび召しありけれども、参らずして、一首の歌を奉りける、
勅なればそむくにはあらず捨て果てし身を出でがてに思ふばかりぞ
御返し、
このごろの習ひぞつらきいにしへは勅にぞ人は身をも捨てける
この御返しを賜はりて、恐れ思ひて、やがてその夜参りて、北面の辺にて、少将雅言((源雅言))につけて、申し入れ侍りて、御返しをば承らずして出でにけり。
寛平の御時((宇多天皇の時。))、素性法師が外(ほか)かかるためしなきよし、入道うちうち申し侍りけるとかや。
===== 翻刻 =====
入道右大弁真観を仙洞の御会にたひたひめしありけれ
ともまいらすして一首の哥をたてまつりける/s157l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/157
勅なれはそむくにはあらす捨はてし身をいてかてに思はかりそ
御返し
この比のならひそつらき古は勅にそ人は身をもすてける
此御返しをたまはりておそれ思てやかてその夜まいりて
北面の辺にて少将雅言につけて申入侍て御返しをは
うけたまはらすしていてにけり寛平御時素性法師か外
かかるためしなきよし入道うちうち申侍けるとかや/s158r
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/158