[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六
====== 213 解脱上人のもとに信濃といふ僧ありけり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
解脱上人((貞慶))のもとに、信濃といふ僧ありけり。いまいましきえせ者にてなん侍りけれども、上人、慈悲によりて置かれたりけれども、思ひあまりてや、硯(すずり)の蓋(ふた)に歌を書かれたりける、
恐しや信濃生みけむははきぎのそのはらさへにうとましきかな
この僧、この歌を見て、あからさまに立ち出づるやうにて、長く失せにけり。さすがに恥はありげにこそ。
===== 翻刻 =====
解脱上人のもとに信濃といふ僧ありけりいまいましきゑせ
ものにてなん侍けれとも上人慈悲によりてをかれたりけれとも/s151r
思あまりてや硯のふたに哥をかかれたりける
おそろしや信濃うみけむははききのそのはらさへにうとましき哉
この僧此哥をみてあからさまに立いつるやうにてなかくうせ
にけりさすかに恥はありけにこそ/s151l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/151