[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六
====== 164 祭主神祇伯親定伊勢国いはでといふ所に堂を建てて瞻西上人を請じて・・・ ======
===== 校訂本文 =====
祭主神祇伯親定((大中臣親定))、伊勢国いはでといふ所に堂を建てて、瞻西上人を請じて、供養を遂げけり。その布施にてぞ雲居寺をば造畢(ざうひつ)せられける。かの上人、歌を好まれければ、時の歌詠み常に寄合ひて、和歌の会ありけり。
和歌の曼陀羅を図絵して、過去七仏を書き奉り、また三十六人の名字を書きあらはせり。また、「諸悪莫作衆善奉行」の文を銘に書かれたり。色紙形あり。義房公ぞ清書し給ひける。
また((「また」は底本「文」。諸本により訂正。))、件(くだん)の曼陀羅は本寺の重宝にてあるべきを、いかなりけることにか、神祇大副親仲((大中臣親仲))、造宮の時、子息土左権守親経((大中臣親経))がもとへ売りて来たれりけるを、銭二十貫にて買ひとどめてけり。相伝して、親守入道((大中臣親守))がもとにあり。
建長元年九月、外宮遷宮に予((「予」は作者、橘橘成季を指す。))参向の時、この曼陀羅を乞ひ出だして拝み奉りて((「奉りて」は底本「てまつりて」。諸本により訂正。))、これを記すなり。
===== 翻刻 =====
祭主神祇伯親定伊勢国いはてといふ所に堂をたてて
瞻西上人を請して供養をとけけり其布施にてそ
雲居寺をは造畢せられける彼上人哥をこのまれ/s122r
けれは時の哥よみつねによりあひて和哥の会ありけり
和哥の曼陀羅を図絵して過去七仏を書たてまつり
又卅六人の名字をかきあらはせり又諸悪莫作衆善奉
行の文を銘にかかれたり色紙形あり義房公そ清書し
たまひける文件曼陀羅は本寺の重宝にてあるへきを
いかなりける事にか神祇大副親仲造宮の時子息土
左権守親経かもとへうりてきたれりけるを銭廿貫にて
買ととめてけり相伝して親守入道かもとにあり建長元
年九月外宮遷宮に予参向の時此曼陀羅をこひ出して
をかみてまつりて記之也/s122l
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