[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六 ====== 162 同じ御時のことにやいろはの連歌ありけるに誰とかやが句に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 同じ御時((二条天皇。[[s_chomonju161|161]]参照。))のことにや、いろはの連歌ありけるに、誰とかやが句に、   うれしかるらむ千秋万歳 としたりけるに、この次の句に、ゐ文字にや付くべきにて((底本「にて」なし。諸本により補う。))侍る。ゆゆしき難句にて、人々案じわづらひたりけるに、小侍従付けける、   亥(ゐ)はこよひ明日は子の日と数へつつ 家隆卿((藤原家隆))の家にて、この連歌侍りけるに、   濡(ぬ)れにけり塩汲む海士(あま)の藤衣(ふぢごろも) 左近将監貞度といふ小侍(こさぶらひ)付け侍りける、   るきゆく風に干してけるかな 人々とよみて、「るきゆく風」を笑ひければ、「さも候はずとよ。ぬ文字の次はる文字にて候へば、かくつかまつりて候ふ。何の難か候ふべき」と((底本「と」なし。諸本により補う。))陳じたりけるに、いよいよ笑ひけり。 小侍従がもどきの句と言ひつべし。 ===== 翻刻 ===== なりかし同御時の事にやいろはの連歌ありけるにたれとかやか句に  うれしかるらむ千秋万歳 としたりけるに此次句にゐもしにやつくへき侍るゆゆしき 難句にて人々あんしわつらひたりけるに小侍従つけける  ゐはこよひあすは子日とかそへつつ 家隆卿の家にてこの連哥侍けるに  ぬれにけりしほくむ海士のふち衣 左近将監貞度といふ小さふらひつけ侍りける  るきゆく風にほしてけるかな 人々とよみてるきゆく風をわらひけれはさも候はすとよ/s121l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/121 ぬもじの次はるもしにて候へはかくつかまつりて候なにの 難か候へきちんしたりけるにいよいよわらひけり小侍従かも ときの句といひつへし/s122r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/122