[[index.html|古今著聞集]] 和歌第六
====== 152 基俊城外しけることありけり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
基俊((藤原基俊))、城外しけることありけり。道に堂のあるに、椋(むく)((底本「むく」に「椋」と傍書。))の木あり。その木に六歳ばかりなる小童登りて、椋を取りて食ひけるに、「ここをば何といふぞ」と尋ねければ、「やしろ堂と申す」と答へけるを聞きて、基俊、何となく口ずさみに、童に向かひて、
この堂は神か仏かおぼつかな
と言ひたりければ、この童、うち聞きて、とりもあへず、
ほふしみこにぞ問ふべかりける
と言へりけり。
基俊、あさましく不思議に覚えて、「この童はただ者にはあらず」とぞ言ひける。
===== 翻刻 =====
基俊城外しける事ありけり道に堂のあるにむく(椋)の
木あり其木に六歳はかりなる小童のほりてむくを
とりてくいけるにここをはなにといふそと尋けれはやしろ
堂と申とこたへけるをききて基俊なにとなくくち
すさみに童にむかひて/s117r
この堂は神か仏かおほつかな
といひたりけれは此童うちききてとりもあへす
ほうしみこにそとふへかりける
といへりけり基俊あさましくふしきに覚てこの
童はたた物にはあらすとそいひける/s117l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/117