[[index.html|古今著聞集]] 文学第五 ====== 134 村上帝隠れさせ給ひて後枇杷大納言延光卿朝夕恋しく思ひ奉りて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 村上帝((村上天皇))隠れさせ給ひて後、枇杷大納言延光卿((源延光))、朝夕恋しく思ひ奉りて、御形見の色を一生脱ぎ給はざりけり。 ある夜の夢に、御製を賜ひける。  月輪日本雖相別 月輪と日本と相別るといへども  温意清涼昔至誠((底本「昔昔」。衍字を見て一字削除。)) 温意(おもひおこす((底本読み仮名に従う。)))清涼昔より至誠  兜率最高帰内院 兜率最も高く内院に帰す  如今於彼語卿名 如今(いま)彼(かしこ)に於て卿が名を語る 大納言、夢覚めて、驚きてこれに和し奉る。  再拝聖顔一寝程((「再」は底本「并」。諸本により訂正。)) 聖顔を再拝す一寝の程   恩言芳処奏中情 恩言芳しき処に中情を奏す  夢中如覚夢中事((底本「如」に「モシ」と読み仮名。)) 夢中にもし夢中の事と覚らば  雖尽一生豈空驚((底本「空」なし。諸本により補う。)) 一生を尽すといへども豈に空しく驚かんや ===== 翻刻 ===== 邑上帝かくれさせ給て後枇杷大納言延光卿あさゆふ 恋しく思たてまつりて御かたみの色を一生ぬき 給はさりけりある夜の夢に御製をたまひける  月輪日本雖相別 温意清涼昔昔至誠  兜率最高帰内院 如今於彼語卿名 大納言夢さめておとろきてこれに和したてまつる  并拝聖顔一寝程 恩言芳処奏中情  夢中如覚夢中事 雖尽一生豈驚/s102r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/102