[[index.html|古今著聞集]] 文学第五
====== 130　治承二年五月晦日内裏にて密々に御作文ありけり・・・ ======

===== 校訂本文 =====

治承二年五月晦日、内裏にて密々に御作文ありけり。題にいはく、「詩境多脩竹(詩境に脩竹多し)」。左兵衛督成範卿((藤原成範))以下参られたりけり。

御製((高倉天皇の御製))の落句に、

　豈忘一時勝金徳　あに忘れんや一字の金徳に勝れるを

　可愍白頭把((「把」底本なし。『百錬抄』により補う。))巻師　愍れむべし白頭の巻を把(と)れる師を

かく作らせ給ひたるを承りて、宮内卿永範卿((藤原永範))・左大弁俊経卿((藤原俊経))、ともに御侍読にて候ひけるが、感涙をのごひて、両人東台の南階をおりて二拝、左大弁舞踏しけり。左大弁は左兵衛督の笏をぞ借り受けける。まことにゆゆしき面目にこそ。

===== 翻刻 =====

  治承二年五月晦日内裏にて密々に御作文ありけり
  題云詩境多脩竹左兵衛督成範卿已下まいられ
  たりけり御製落句に豈忘一時勝金徳可愍白頭
  巻師かくつくらせ給たるをうけたまはりて宮内卿永
  範卿左大弁俊経卿ともに御侍読にて候けるか感涙
  をのこひて両人東臺の南階をおりて二拝左大弁
  舞踏しけり左大弁は左兵衛督の笏をそかり
  うけけるまことにゆゆしき面目にこそ／s99r

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