[[index.html|古今著聞集]] 文学第五 ====== 117 いづれの年にか天下に疫病はやりたりけるにある人の夢に・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== いづれの年にか、天下に疫病はやりたりけるに、ある人の夢に、文時三品(さんぼん)((菅原文時))の家の前を、恐しげなる鬼神ども、みな拝して通りけるを、「あれは何といふことにて、かくはかしこまるぞ」と問ひければ、『隴山雲晴李将軍之在家((底本「隴」に「瀧イ」と傍注。))(隴山雲晴れて李将軍の家に在り)。』と作りたる人の家をば、いかでかただ無礼(むらい)にて過ぐべき」と答へけり。 鬼神は心たしかにて、かく礼儀も深き((「深き」は底本「ふるき」。諸本により訂正。))によりて、文をも敬ふにこそ。一道に長ぜる人は、昔も今もかやうの不思議多く侍り。 ===== 翻刻 ===== いつれの年にか天下に疫病はやりたりけるに或人の 夢に文時三品の家のまへをおそろしけなる鬼神 ともみな拝してとをりけるをあれはなにといふことにて かくはかしこまるそととひけれは隴(瀧イ)山雲晴李将軍之 在家とつくりたる人の家をはいかてかたた無礼にて過 へきとこたへけり鬼神は心たしかにてかく礼儀もふる/s91l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/91 きによりて文をもうやまふにこそ一道に長せる 人はむかしもいまもかやうのふしきおほく侍り/s92r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/92