[[index.html|古今著聞集]] 文学第五
====== 114 晴後山川清といふことを以言つかうまつりけるに・・・ ======
===== 校訂本文 =====
「晴後山川清。(晴れて後山川清し。)」といふことを、以言((大江以言))つかうまつりけるに、
帰嵩鶴舞日高見 嵩に帰る鶴ひて日高く見ゆ
飲渭竜昇雲不残 渭に飲む竜は昇りて雲残らず
と作りて、以言すなはち講師にて読み上げたるを、為憲朝臣((源為憲))その座に侍るが、聞きて書嚢((「書嚢」は底本「土嚢」。字形の類似による誤写とみて訂正。以下同じ。))に頭を入れて涙を流しけり、見る人、あるいは感じ、あるいは笑ひけり。
かの為憲は、文場ごとに嚢に抄物を入れて随身しけるを、書嚢とは名付けたりけり。
===== 翻刻 =====
晴後山川清といふことを以言つかうまつりけるに帰嵩
鶴舞日高見飲渭龍昇雲不残とつくりて以言/s90l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/90
すなはち講しにてよみあけたるを為憲朝臣其座に侍る
か聞て土嚢に頭を入てなみたをなかしけりみる人或は感し
或はわらひけり彼為憲は文場ことに嚢に抄物を
入て随身しけるを土嚢とは名つけたりけり/s91r
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/91