====== 閑居友 ====== かんきょのとも ===== 概要 ===== [[鎌倉時代]]前期の仏教[[説話集]]。 成立年代は、[[跋文]]に「承久四年」とあることから、承久4年(1222年)脱稿である。撰者は[[慶政]]と考えられている。 上下二巻からなり、上巻21話、下巻11話の計32話。巻にはそれぞれ冒頭に目録がある。 説話集ではあるが、各説話に作者自身の意見が多く書かれており、随筆的な性質も持っている。 第一話の後半から、[[鴨長明]]の[[発心集]]の影響を受けていることがうかがえるが、先行の説話集に書かれた説話を意図的に避けているため、他書に採られた説話はほとんどない。また、女性に関する説話が多いため、高貴な女性の依頼によって作られたとも考えられている。 ==== 『閑居友』第一話後半部分 ==== > さても、発心集には伝記の中にある人々あまた見え侍るめれど、この書には、伝に載れる人をば入るることなし。かつはかたがた憚りも侍り。また、世の中の人のならひは、わづかにおのれが狭く浅くものを見たるままに、「これはそれがしが記せるものの中にありし事ぞかし」など、よにもたやすげにいふ人もあるべし。また、もとより筆をとりてものを記せる者の心ざしは、「我この事を記しとどめずは、後の世の人いかでかこれを知るべき」と思ふより始まれるわざなるべし。さればこそ、章安大師は「この事もし墜ちなば、将来も悲しむべし」とは書き給ふらめ。いはんやまた、古き人の心も巧みに言葉もととのほりて記せらんを、今あやしげに引きなしたらむもいかがと覚え侍り。 > また、この書き記せる奥どもに、いささか天竺・震旦・日域の昔の後をひと筆など引き合はせたる事の侍るは、「これを端にて知り初むる縁ともやなり侍らん」など思ひ給ひて、つかうまつれる也。 > 長明は、人の心をも喜ばしめ、また結縁にもせむとてこそ、伝の中の人をも載せけんを、世の人のさやうには思はで侍るにならひて、かやうにも思ひ侍るなるべし。ゆめゆめ草隠れなきかげにも、「我をそばむる詞かな」とは思ふまじきなり。 ===== 諸本 ===== 『閑居の友』の伝本は三種に分けることができ、甲類の誤綴による本文の差異から、甲類から乙類、丙類が発生したと考えられている。 また、甲類のなかでも、書陵部本と岩瀬文庫本は伝為相本の転写本と考えられ、書写年代の古さと、本文の正確さから伝為相本が最善本とされる。 ==== 甲類 ==== * 伝為相本 [[尊経閣]]蔵 * 会・文庫所蔵重要文化財『閑居友』(前田育徳会尊経閣文庫編刊・1985年5月・勉誠社)に影印。 * [[:text:kankyo:]]に翻刻。 * 宮内庁書陵部本 * 岩瀬文庫本 * 松平文庫本 島原市立公民館蔵 ==== 乙類 ==== * 神宮文庫本 * 木板刊本 * 寛文二年板 * 刊年不明の本 * 無刊記本 * 青蓮院板 * 続群書類従本 ==== 丙類 ==== * 譚玄本(一) 尊経閣蔵 * 譚玄本(二) 吉田幸一蔵 ===== 参考 ===== ==== 電子テキスト ==== * [[:text:kankyo:]](やたナビTEXT) * [[http://www2s.biglobe.ne.jp/~Taiju/1222_kankyo_no_tomo.htm|閑居友:Taiju'sNotebook]] ==== 注釈書 ==== * 中世の文学『閑居友』(美濃部重克・三弥井書店・昭和54年5月) * 新日本古典文学大系『[[宝物集]] 閑居友 [[比良山古人霊託]]』(小島孝之・岩波書店・1993年11月) {{tag>鎌倉時代 説話 仏教 仏教説話 閑居友 慶政}}