====== 部立 ====== ぶたて ===== 定義 ===== 和歌集で、[[和歌]]のテーマによる分類。 [[万葉集]]の場合、雑歌・相聞歌・挽歌の三大部立があり、[[古今和歌集]]では、春(上・下)・夏・秋(上・下)・冬・賀・離別・羈旅・物名・恋(一〜五)・哀傷・雑歌(上・下)・雑体・大歌所御歌の部立がある。 古今和歌集の部立は、含まれる内容が変わったり神祇・釈教が加わるなど、時代により多少の変化はあるが、おおむねこれ以降の歌集に踏襲された。 ===== 万葉集の三大部立 ===== ==== 雑歌 ==== 雑歌。「ぞうのうた」、「くさぐさのうた」とも読む。相聞、挽歌以外の歌をすべていう。万葉集では相聞・挽歌よりも前に配置され、重んじられる。 ==== 相聞 ==== 相聞。古今集以降の部立に見られる、恋歌に相当し、男女の恋の歌を中心にするが、肉親や友人間の愛情も含まれる。 ==== 挽歌 ==== 挽歌。葬送の歌、病中の作、追悼など、人の死に関する歌。 ===== 古今和歌集以降の主な部立 ===== ==== 四季 ==== 四季を詠んだ歌。春(陰暦1〜3月)夏(陰暦4〜6月)秋(陰暦7から9月)冬(陰暦10〜12月)それぞれあるが、とりわけ春と秋が多い。 ==== 賀 ==== 賀歌。祝いの歌。長寿の祝い、出生・加冠などの[[通過儀礼]]、大嘗会・祭礼などの[[年中行事]]などをテーマとした歌。 ==== 離別 ==== 離別歌。任官・寺社参詣・遊覧など、旅立ちの別れの情を詠んだ歌。 羈旅歌と密接な関係にあり、[[拾遺和歌集]]・[[金葉和歌集]]・[[詞花和歌集]]では離別部に羈旅歌を含み、[[新古今和歌集]]以降では、[[新勅撰和歌集]]・[[続古今和歌集]]・[[続拾遺和歌集]]・[[続千載和歌集]]・[[風雅和歌集]]で羈旅部に離別歌が含まれる。 ==== 羈旅 ==== 羈旅歌。旅の景物、旅の際の経験や感情を詠んだ歌。 離別歌と密接な関係にあるが、[[千載和歌集]]・[[新古今和歌集]]以降、実際の旅が増えるのに従い、離別部から羈旅部の歌へと重心がうつる。 ==== 物名 ==== 物名。「もののな」とも読む。歌の内容に関係なく、[[隠題]]や[[折句]]などの技法を用いて、物の名前を和歌に詠み込んだもの。 ==== 恋 ==== 恋歌。「こいうた」「こいか」とも読む。恋愛を詠んだ歌。[[万葉集]]の相聞に該当する。 ==== 哀傷 ==== 人の死を悲しみ追悼する歌。万葉集の挽歌に相当する。死去、葬送から、死者の述懐、辞世の歌など。 ==== 雑歌 ==== 雑歌。「ぞうのうた」「くさぐさのうた」とも読む。上記の部立に分類できない歌。日常性の高い歌が多い。万葉集の三大部立の一つでもあるが、古今和歌集以降の雑歌とは内容が異なる。