====== 唐物語 ====== からものがたり ===== 成立 ===== [[平安時代]]末期に成立したと考えられる、27話からなる翻訳[[説話集]]。「[[桑華書誌]]」所載の「古蹟歌書目録」により、[[藤原成範]]の作という説が有力。 * [[https://www.jstage.jst.go.jp/article/tja1948/12/3/12_3_169/_article/-char/ja/|太田 晶二郎「「桑華書志」所載「古蹟歌書目録」―「今鏡」著者問題の一徴証など―」(日本學士院紀要Vol. 12 (1954)) ]] 題名は『[[大和物語]]』にたいしての『唐物語』だろう。 ===== 内容 ===== 1話につき1首以上の[[和歌]]を持つ、[[歌物語]]の形式をとり、同様な形式をもつ[[蒙求和歌]]が、[[説話]]の内容を和歌にしているのに対し、説話の登場人物が和歌を詠むという形式になっている。 中国人が和歌を詠むという、ある意味シュールな説話集である。 出典は未詳の二話(第9話「[[張文成]]」・第27話「雪々」)をのぞき、すべて漢籍に求めることができ、 そのほとんどが『[[蒙求]]』(11話)と『[[白氏文集]]』(6話)である。 ===== 諸本 ===== 池田利夫氏によって次の三つに分類されている。 ==== A類 ==== 尊経閣文庫本を祖本とするもの。尊経閣文庫本は鎌倉時代末期の筆写と考えられるが、一紙二丁が欠落している。 * 尊経閣文庫本 * 松平文庫本 * 多和文庫本 * 彰考館本 * 宮内庁書陵部本 * 東大史料編纂所本 * 加茂季鷹校訂本 * 名古屋大学文学部蔵。 * 文化五年刊、恵比須屋市右衛門の[[版本]]の本文 ==== B類 ==== 目録を有し、出典の注記がある。 * 宮内庁書陵部一本 * 日本大学本 * 松尾本 * 松尾聡氏蔵。下巻のみ。 * 神宮文庫本 * 筑波大学本 * 国会図書館本 ==== C類 ==== [[版本]]系統。 * 東京大学本 * [[清水浜臣]]校訂本 * 文化六年刊、金花堂須原佐助版、版本。 ==== 吉田幸一氏所蔵異本 ==== 説話の配列が他の諸本と著しく異なっており、C類に近いが本文も異文が多い。古典文庫560で影印・翻刻。 ===== 電子テキスト ===== * [[:text:kara:]] ===== 参考文献 ===== ==== 注釈書 ==== * 唐物語新釈(浅井峯治訳注・有精堂) * 唐物語全釈(小林保治編著・笠間書院) * 講談社学術文庫『唐物語』(小林保治編著・講談社・2003年6月) * 笠間書院版の再刊 * 旧版にあった酒井茂幸氏作成「類題歌・類想歌一覧」は紙幅の都合で割愛。 ==== 影印 ==== * 古典文庫『唐物語〈尊経閣文庫本〉』(池田利夫編・古典文庫・昭和47年5月) * 『唐物語』の最古[[写本]]、尊経閣文庫本の[[影印]]と[[翻刻]]。 * 和泉書院影印叢刊82『唐物語 全』(安田孝子編・和泉書院・1993年4月) * 名古屋大学文学部国語国文学研究室所蔵本の影印。 * 松平文庫影印叢書第七巻『中世説話編 唐鏡・唐物語・今物語』(松平黎明会編・新典社・平成5年8月) * 古典文庫『異本唐物語』(安田孝子編・古典文庫・平成5年7月) * 吉田幸一氏蔵異本『唐物語』の影印と翻刻。 {{tag>鎌倉時代 説話 歌物語 翻訳 藤原成範 唐物語}}