====== 三国伝記 ====== さんごくでんき ===== 成立 ===== [[室町時代]]に成立した[[説話集]]。各巻30話の12巻からなる。成立年代は、序文から応永十四(1407)以降と考えられている。 撰者は、「沙弥玄棟」もしくは「沙門玄棟」とあるが、玄棟がどのような人物であるかは定かではない。[[近江]]の説話が多いこと、[[比叡山]]関連の説話が多いことなどから、近江出身の[[天台宗]]の僧かとされる。 ===== 内容 ===== [[天竺]]の梵語坊という僧侶、[[明]]の漢字郎という俗、日本の和阿弥という遁世者が清水寺に参詣し同席する。和阿弥の提案により、三人でかわりばんつに巡り物語をする。順番は、梵語坊、漢字郎、和阿弥の順で、それぞれ梵曰、漢曰、和曰で説話が始まる形式になっている。 この形式は『[[太平記]]』巻三十五の「北野通夜物語」を模したもので、内容的にも影響を受けていることが指摘される。 [[説話]]は仏教説話が多いが、そうでないものもあり、最初の一巡は、梵語坊が[[釈迦]]の誕生、漢字郎が[[孔子]]の誕生、和阿弥が[[聖徳太子]]の誕生説話となっている。 多くの説話に出典があり、『[[三宝感応要略録]]』『[[発心集]]』『[[古事談]]』『[[長谷寺霊験記]]』『[[沙石集]]』『[[山王霊験記]]』『[[太平記]]』とは同文性が高く、直接の関係が指摘される。『[[今昔物語集]]』との関係も深いが、直接の関係はなかったと見られている。 ===== 諸本 ===== [[版本]]と[[写本]]があり、版本には三種類あるが、版木は同じである。版本と写本には大きな異同がある。 ==== 写本 ==== * 国立国会図書館本 * 巻3・4・5・11を欠く。 * [[近世]]初期の写か。 * 版本にない説話(巻7-6・16、巻8-7)があり、これを含めると各巻三十話となる。 * 吉田幸一氏所蔵[[断簡]] * 巻1-30の後半部分のみ。 * 版本に近い。 * 「説話文学研究」3号(昭和44年)に[[翻刻]]。 ==== 版本 ==== 12巻からなる。 * 寛永14年版本 * 無刊記版本 * 明暦2年版本 ===== 参考文献 ===== * 中世の文学『三国伝記』(池上洵一・三弥井書店・上 昭和51年12月、下 昭和57年7月) {{tag>室町時代 説話}}