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- 上巻 4 精進波羅蜜 @text:sanboe
- 死なむ」と云ふ。 王と后(きさき)と誘(こしら)へ勧むるに、つひに物の食はずして、七日起きず。后、泣きて白(まう)さく、「太子の心動かしがたし。今日、前にして死なむを見むよりは、なほ免してたまさかにも還りもや来ると憑(たの)み待たむ」と云ふ。王、これに随ひて、涙を流して免しつ。 国に一人の翁あり。よく海の道を知れり。年八十に成りて、二つの目、共に盲(めし)ひたり。王、みづから往きて、「太子の供に往け」と語らふ。翁、泣きて白(まう)す、「海に往く者は、全く還ことかたし。この仰せ忍びがたし。死なむ所まで候らはむ」と云ふ... ば、紅の蓮あり。それを過ぎてなほ行き給はば、龍王の宮には至り給ひなむ」と教へて死ぬ。 太子、悲しび泣きて、云ひしがごとく独り行く。蓮(はちす)の所を見れば、青き毒蛇ありて、花の茎を纏(まと)へり。目を