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- 巻4 24 さても都にとどまるべきならねば去年思ひ立ちし宿願も果たしやすると・・・
- まれましましけるに、東(あづま)の夷(えびす)を降伏(がうぶく)のために、勅を承りて下り給ひけるに、伊勢大神宮((伊勢神宮))にまかり申しに参り給ひけるに、『前(さき)の生まれ、素盞嗚尊(そさのをのみこと)たりし時、出雲の国にて八岐大蛇の尾の中より取り出でて、われに与へし剣(つるぎ)なり。錦((「錦」は底本... 年むまれましましけるにあつまのゑひすをかうふくのために ちよくをうけたまはりてくたり給けるに伊勢大神宮にまかり 申にまいり給けるにさきのむまれそさのをのみことたりし時 いつものくににて八ま
- 巻4 29 さのみあるべきならねば外宮へ帰り参りて・・・
- も、われをも、祝はれたる返りごとは、いかが申さざるべき」とて、夜中ばかりに絹(きぬ)を二巻包みて、「伊勢島((伊勢志摩))の土産(とさん)なり」とて、 神垣にまつも久しき契りかな千年(ちとせ)の秋の長月のころ その暁の出潮((「出潮」は底本「ちしを」。))の舟に乗りに、宵より大湊と((「大湊と」は底... し君をも我をもいははれたる返 ことはいかか申ささるへきとて夜中はかりにきぬを二まきつつ みて伊勢しまのとさんなりとて 神かきにまつもひさしきちきりかな千とせの秋のなか月の比 そのあか
- 巻3 7 そのころ真言の御談議といふこと始まりて・・・
- 玉の夢をも思ひ合はせむために、弥生になるまで待ち暮らして侍るも、なほざりならず推し量り給へ。かつは、伊勢・石清水・賀茂・春日、国を守る神々の擁護(おうご)に漏れ侍らん。御心の隔てあるべからず。かかればとて... おもひ あはせむためにやよひになるまて待くらして侍るもなを さりならすをしはかりたまへかつは伊勢いはし水かも春 日国をまもる神々のをうこにもれ侍らん御心のへたて あるへからすかかれはとて我
- 巻4 5 伊豆の国三島の社に参りたれば・・・
- とて、ゆゑある女房の、壺装束にて行き帰るが苦しげなるを見るにも、「わればかり物思ふ人にはあらじ((『伊勢物語』27段「わればかり物思ふ人はまたもあらじと思へば水の下にもありけり」))。」とぞ思えし。 月
- 巻1 22 その折りのその暁より日を隔てず心の内はいかにいかにと・・・
- 凡河内躬恒「長しとも思ひぞはてぬ昔より逢ふ人からの秋の夜なれば」))、言葉残りて鳥鳴きにけり((『伊勢物語』22段「秋の夜の千夜を一夜になせりとも言葉残りて鳥や鳴きなむ」))。 「『あらぬさまなる朝帰
- 巻1 38 兵部卿の沙汰にて装束などいふもただ例の正体なきことなるにも・・・
- ))は後嵯峨院の姫宮にてものし給ひしが、御服(ぶく)にて下り給ひながら、なほ御暇を許され奉り給はで、伊勢に三年(みとせ)まて御渡りありしが、この秋のころにや、御上りありし後は、仁和寺に衣笠といふわありに住
- 巻3 12 神無月のころになりぬればなべて時雨がちなる空の気色も袖の涙に争ひて・・・
- しんぴつ)の御経の折、面々の姿・捧げ物などまで、数々思ひ出でられて、「うらやましくも返る波かな((『伊勢物語』7段・『後撰和歌集』羇旅「いとどしく過ぎ行く方の恋しきにうらやましくも返る波かな」))」と思ゆ
- 巻4 1 如月の二十日あまりの月とともに都を出で侍れば・・・
- と思ふべき世の習ひかは」と思ふより、「袖の涙も今さら、宿る月さへ濡るる顔にや((『古今和歌集』恋五 伊勢「あひにあひて物思ふころのわが袖に宿る月さへ濡るる顔なる」。))」とまで思ゆるに、われながら心弱く思
- 巻4 4 清見が関を月に越え行くにも・・・
- 島が原に行きつつ、高嶺にはなほ雪深く見ゆれば、五月のころだにも鹿の子斑(まだら)には残りけるに((『伊勢物語』九段による。))と、ことわりに見やらるるにも、跡なき身の思ひぞ、積もるかひなかりける。煙も今は
- 巻4 6 二十日あまりのほどに江の島といふ所へ着きぬ・・・
- もある。))何となく、みな人も静まりぬ。 夜も更けぬれども、はるばるきぬる旅衣(たびごろも)((『伊勢物語』九段「唐衣着つつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」。))、思ひ重ぬる苔筵(こけむ
- 巻4 7 明くれば鎌倉へ入るに極楽寺といふ寺へ参りて見れば・・・
- 、簣(あじか)を肘(ひぢ)にかけ、蓑を腰に巻きても、身の果てはありしかども、「わればかり物思ふ((『伊勢物語』27段「わればかり物思ふ人はまたもあらじと思へば水の下にもありけり」。ただし、小野小町とは無関
- 巻4 16 さても隅田川原近きほどにやと思ふも・・・
- など語れば、業平の中将((在原業平。))、都鳥((「都鳥」は底本「宮ことも」。))に言問ひける((『伊勢物語』九段。))も思ひ出でられて、鳥だに見えねば、 尋ね来しかひこそなけれ隅田川住みけん鳥の跡
- 巻4 18 熱田の宮に参りぬ・・・
- T>>]] 熱田の宮((熱田神宮))に参りぬ。 通夜したるほどに、修行者どもの侍る、「大神宮((伊勢神宮))より」と申す。「近く侍るか」と言へば、「津島の渡りといふ渡りをして参る」よし申せば、いと嬉し
- 巻4 25 かかる騒ぎのほどなれば経沙汰もいよいよ機嫌悪しき心地して・・・
- き心地して、津島の渡り(([[towazu4-18|4-18]]参照))といふことをして、大神宮((伊勢神宮))に参りぬ。卯月の初めつ方のことなれば、何となく青みわたりたる梢(こずゑ)も、やう変りておもし
- 巻4 28 まことや小朝熊の宮と申すは鏡造の明神の・・・
- 忘れじな清き渚に澄む月の明け行く空にの残る面影 照月(てるづき)といふ得選(とくせん)は、伊勢の祭主がゆかりあるに、何としてこの浦にあるとは聞こえけるにか、「院の御前にゆかりある女房のもとより」